ヤマハは、ジャパンモビリティショー2025で、YZF-Rを彷彿とさせる電動スーパースポーツモデル「Proto BEV」を発表した。レーサーのような見た目だが、実は公道走行を想定しており、ゼロ発進からの加速はYZF-Rを超えるという! さらに、現在の規制に適合し、非常に現実的な水素エンジンの「H2 Buddy Porter Concept」も登場。しかし、法規制の壁はまだ越えなければならないようだ。
サーキットではなく、ワインディングを楽しむためのEV「Proto BEV」
ヤマハがジャパンモビリティショー2025で世界初公開した「Proto BEV」は、バッテリーEVならではの楽しさを体現した参考出品車だ。実際に走行可能な車両で、軽量・コンパクトでありながら、新しいEVらしい乗り味と扱いやすさを追求。バッテリーEVの魅力であるリニアなスロットルレスポンスとパワフルで滑らかな加速性能は、従来のエンジン車で培ってきた走行安定性と両立されている。
**――コンセプトは?**
「電動パワーでスポーツライディングの楽しさを表現する車両です。見た目はレーサーですが、車両のキャラクターは『サーキット最速』ではなく、『ワインディングを楽しみたい』というものです。ワインディングツーリングでの楽しいスポーツライディングシーンですね。YZF-R9やYZF-R7の世界観に近い?
「それとはまた違う楽しさを生み出したいと考えています。低速からの加速感や、EVならではの力強さですね。タイムや具体的な数値は公表できませんが、EVは0rpmからトルクが出ているので、エンジン車よりもダッシュ力があります」
**――YZF-R1よりも速い?**
「ある速度域に達するまでの速さではEVの方が速いですが、そこまでの距離ではエンジン車の方が速い。そのあたりはYZF-R1を開発する上で、YZF-R1よりも速くすることを目指しています」
軽量化のために専用開発された車体とバッテリー
バッテリーとシャシーは、車体構造のために専用開発された。モーターは既存の部品を使用。バッテリーは非常に大きく重い。航続距離やパワーを考えると、チームメンバーにとって最も困難だったのは、このシャシーにどうやってコンパクトかつ軽量に収めるかだったという。外装にカーボンを採用して総重量を抑えつつ、フレームレイアウトやバッテリーとの関係性も軽量化を意識した設計となっている。具体的には、車体中央からシートにかけて配置されるL字型のバッテリーなど、様々な軽量化の工夫が凝らされている。
現時点では「いつ市場に出せるかは断言できない」とのことだが、技術的な側面だけでなく、ビジネス的な側面からも今後の計画を継続していくという。大手メーカー各社が大型のEVコンセプトモデルを発表しているが、まだ市販化の段階には至っていない。ヤマハのProto BEVは、YZF-Rシリーズでお馴染みのスーパースポーツレイアウトで現実味があり、高い運動性能も期待できそうだ。今後の展開に注目していきたい。
H2 Buddy Porter Concept トヨタ製小型水素タンクでコンパクト化を実現
続いては、水素エンジンを搭載したスクーター「H2 Buddy Porter Concept」だ。水素エンジンと車体はヤマハが開発。後部に搭載されるのは、トヨタがバイク用に開発し、既に認証を取得済みの小型高圧水素タンクだ。車両の航続距離は水素満充填で100km超、タンクの上には大きなラゲッジスペースを備える。ユーロ5などの現行規制に適合し、実用性を考慮した設計となっている。
**――コンセプトは?**
「HySE(ハイセ)プロジェクトのような、4社バイクメーカーの技術研究組合とは異なり、ヤマハとトヨタの共同開発モデルです。ヤマハとトヨタは数年前から共同で水素開発を進めており、その成果がこのモデルです。ヤマハ単独ではできなかったトヨタとの水素タンクの共同開発により、バイクの領域でも水素社会を広げていきたいという思いを表現しています」
従来の水素バイクと比較して、非常にコンパクトなのが特徴。水素タンクを小型化したのだ。実は、バイクに搭載できる水素タンクの容量は、法律で23L以下と定められている。これはバイクのような小さなガレージでの水素漏れが発生した場合でも危険ではないという数値だ。しかし、従来は自動車用の大型タンクしかなく、23L以下の容量に適したタンクがなかったため、トヨタに依頼して合計23L以下となる4本のタンクを製作してもらった。さらに、1本のタンクを小径化し、寝かせることで、タンク自体の重量がありながらも重心を低くすることができた。重い荷物を積んでも、素早く簡単に走行できるような走行テストも重ねている。
## X-FORCEエンジンを小変更、重量増は「小学生くらい」?
現行規制に適合し、航続距離100kmの現実的なモデル? X-FORCEの155ccエンジンは元々燃費が良い。実際、実測値ベースで実モードで100km以上走行可能だ。ガソリンエンジンからの水素化にあたり、ポート噴射から直噴に変更したが、それ以外はガソリンエンジンをそのまま流用している。
ガソリン車を水素燃料化すると、どのくらいの重量が増加するのだろうか? まだ軽量化できる余地はあるものの、現時点での数値はややネガティブに聞こえる。それでもガソリン車よりは重くなるだろう。しかし、重量が増えても扱いやすいように、重心位置などに配慮しているという。シリンダーの重量はまだ公表されていない。
「人の重さくらいですか?」
「それよりはずっと軽いです。小学生くらいをタンデムに乗せるくらい?」
「そうですね(笑)」
NOx(窒素酸化物)排出量は既にユーロ5基準をクリア。燃料電池車に義務付けられている排出ガス規制の、未燃水素濃度4%もクリアしている。現時点では水素エンジン車はこの規制対象ではないが、将来的に水素エンジン車にも同様の規制が適用されることを想定し、水素濃度も4%以下に抑えている。「技術開発がどこまで進んでいるかを示したい」とのことだ。
## 水素ステーションはバイクで使えるのか?
しかし、水素バイクの実現には様々な法的な壁が存在する。水素タンクには、金属ライナーを持つ「Type3」と、樹脂ライナーを持つ「Type4」の2種類がある。バイクには軽量なType4が適しているため、Type4の樹脂製タンクを製作してもらった。しかし、問題が発生した。高圧ガス保安法では、水素燃料自動車はType3とType4のタンクを選択できるが、バイク用のType4タンクに関する規定がないのだ。開発段階から経済産業省や国土交通省と協議を重ねてきたが、法律の改正には至っていない。各省庁からは「H2 Buddy Porterは公道走行可能な安全性を有する」とのコメントは得られているものの、今後、法律が改正されない限り実用化は難しいという。
もう一つの問題は水素ステーションだ。単純に数が少ないという問題に加え、容量の問題もある。水素ステーションでは、タンクの情報を通信しながら充填する。圧力を上げていくと、それに伴って温度も上昇する。温度が上がりすぎると危険なため、温度を適切なレベルに保つために充填速度を制御している。タンクが小さいほど充填速度は遅くなる。これは、世界的に小型の水素モビリティが少ないことも一因だが、現在の水素ステーションでは、タンク容量が50L以上でないと充填速度に対応できない。前述の通り、バイクは23L以下の水素タンクしか搭載できないため、現状では水素ステーションでの充填ができないのだ。この問題については、4社バイクメーカーやHySEなどが協力して取り組んでいる分野だという。「水素への機運は予想以上に高まっているが、法規制が追いついていない」と雪島氏は語る。
## 商用だけでなく、「バディ」としての水素バイクの誕生を期待!
「H2 Buddy Porter Concept」という名称に込められた意味は?
「ワークバイクですが、それだけでは面白くないので、ヤマハらしいデザインや使い勝手を加えつつ、『バディ』のようなイメージも持たせました。仕事の相棒でありながら、頼れる仲間のような存在です」
ヤマハのH2 Buddy Porter Conceptは、水素エンジンを搭載したバイクの中で最も現実的なモデルと言えるだろう。カーボンニュートラルの一つの選択肢としてフル電動化がある一方で、既存の内燃機関に近い乗り味という点で水素エンジンの魅力は大きい。その中でも、このモデルは最も実用化に近い存在だ。ヤマハをはじめとするメーカー各社が、様々な障壁を乗り越え、実用化に向けて尽力してくれることを期待したい。
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